• M2_STAFF

With コロナ時代の地域の広報・プロモーションを考える(5)栃木県足利市

更新日:7月12日

「With コロナ時代の、様々な地域の広報・プロモーションをどう考えるか」

第5弾は栃木県足利市 総合政策部 まちの魅力創出課 まちの魅力創出担当 前川 美帆さんにお話を伺います。


【概要】足利市の市民参加型のシティプロモーションの歩みとコロナ禍における現時点での課題、そして市制100周年のプロジェクト「A100」の取り組みなど、幅広いテーマでお伺いしました。(敬称略)。

*なお、取材は2021年5月下旬に実施したため、内容は当時のものになります。


足利市シティプロモーションの歩み

佐藤:足利市さんとは、数年前、シティプロモーションの取り組みに参加させていただいて以来のお付き合いになります。当時のいろいろな取り組みが、今の施策に繋がっているのだと思うのですが、時系列的な経緯から、まずお話しをいただければと思います。


前川:はい。わかりました。

佐藤さんには、2018年に行なっていたシティプロモーション活動のひとつである、市民参加ワークショップと魅力体験バスツアーにご参加いただいたのがご縁でして、そこから、かれこれ2年、3年のお付き合いになります。

それ以来、佐藤さんは足利のファンになっていただいて、何度も何度も足利に来られているということで本当に有難く思っています(笑)

当時、「素通り禁止!足利」というキャッチコピーを掲げて、シティプロモーションをやっていたんですが、この「素通り禁止!足利」というキャッチコピーは、すごく尖っていて、キャッチ―な言葉だったが故に、あまり長期間使ってしまうと、逆のイメージもついてしまうんじゃないかという懸念もあったので、方向転換を図るような予定をしておりました。

それで、市の魅力を再度掘り起こそうということや、「素通り禁止!足利」ってなんだったんだろうというところを、もう一度再確認するようなイベントとして市民参加のワークショップを開催したのが2018年でした。

その成果を、2019年に「これからの足利シティプロモーション2019」というアクションプランのようなものにまとめた中で、その後3年間のシティプロモーションのあり方をある程度計画をして、今に至っています。

本来であれば、2021年に市制100周年を迎えましたので、そのタイミングで、「素通り禁止!足利」の次の段階へ進む予定でした。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大や、2019年の台風19号の被害などを受けたことにより少し予定が後ろ倒しになっている部分もありますが、基本的には、計画に基づいて着実に進めているところです。


コロナ禍のシティプロモーションについて

佐藤:これまでの経緯を伺うと、慎重に方向性を確認しつつ、現状に到達したのだなということが理解できました。

次に現在、不本意ながら起きているこのコロナ禍において、今、足利市さんのシティプロモーションは、どんな状況にあるのかについて、お聞かせいただければと思うのですが。


前川:どこの町も一緒だと思うのですが、やはり人が集まれなくなったことの影響を受けています。足利市でも、予定していた都内でのイベントへの出展が見送りになったり、地元で「足利の誇り」と言われている名物の花火大会も中止になったり、正直チャンスを逃したと思うことはたくさんありました。ただ一方では、地域内での協力や助け合いの機会が増え、地域の繋がりが深まったり、また多くの方が地元やふるさとに回帰をしてくれているなど、地域への参画を感じることが増えました。

それから例えばリアルでやっていたイベントをオンライン開催に変えたりというのは、どこの町もやっていることだと思うんですけれども、足利でも、移住関係の相談をオンライン化したり、ワークショップなどのイベントも県内の別のエリアの方々にターゲットを絞ったり、移住や関係人口といったことも頭に置きながら進めているのが現状です。


佐藤:シティプロモーションという、本来どれだけ接点が持てるかがテーマの事業を、「非接触/密を避ける」工夫をしながら進めておられるということですよね。

現在のお取り組みとしてはそのようなところだと思うんですけれども、では改めて今の状況の中でシティプロモーションをどう進めていったらいいのだろうかを考えた時に、向かう先、方向性については、どのようにお考えでしょうか。


前川:数年前までは、シティプロモーションというと、何千万円という予算がついていて、お金をかけて動画をつくる、お金をかけてメディアに出してもらう、話題作りをする、といったような面がありましたが、今はどこの町もすごく厳しくなっていると思います。ですが、お金をかけたから良いというものではないと思っています。今、足利では、予算だけの話をすると、数年前に比べて1/10くらいになってしまいましたけど、職員の足で稼ぐ、人脈で稼ぐことを心がけています。

それと、足利の方々ってすごくて、自分たちで足利のために何かしようと思うだけでなく、実現させる力がとても強いんです。そういう力がここ数年で現れてきているので、そういった意味では、「次の展開」になってきているかなあという感じはありますね。


自走しはじめた足利の市民

佐藤:市民がいわゆる「自走」しはじめているように思えるのですが、それは「足利ならでは」「足利だからこそ」なのでしょうか。 前川:毎年、市民アンケートで、「足利が好きですか」とか「誇りに思えますか」といったことをお聞きしているのですが、毎年9割を越える方が足利を「好き」、「とても好き」と答えてくださっていまして、それはたぶん高い方なんだろうと思います。 それを「好き」で終わりにするのではなく、町へのアクションに変換するということを、実はこれまで目標にしてやってきていました。どの政策が直接的につながったかというのはわからないんですが、そこが少しずつ形になってきているのかなと思うこともあります。あとはUターンで戻ってこられた若い方、それと地域おこし協力隊の方々が、すごくハブになってくれていまして、そこから水の輪が広がるようにパワーが生まれてきているんじゃないかな、というのは感じています。 佐藤:そのあたり、担当者として工夫されていることがありますか? 前川:「常に顔の見える立場でいよう」と思っています。 役所っていうと、一般的にはあまり身近じゃない感じを持たれているところがあると思うんです。我々としては、市民と顔の見える関係を常に意識していて、何かあればとりあえずお会いするとか、何かあればレスポンスはとにかく早くとか、そういう点は気をつけています。 それと、向こうから来られた方だけではなく、こちらからも、地域おこし協力隊の活動や、まちの方の活動になるべく寄り添うように意識はしているつもりです。 佐藤:お聞きしていると、やはり市民の方の関与の度合いの高い地域性が伺われるように思います。いろんな方々が関わってくれるようになったきっかけはどうだったのでしょう。最初は市からの働きかけで動き始めたのですか。 前川:そうですね。 最初の8年前は、「シティプロモーションというものをはじめます」ということを周知するところからなので、まずは市民の方の意見を聞きたいと協議会を作りました。協議会の人選は、関係団体の方に推薦をお願いして、「こういう方がいいんじゃない?」ということで候補を上げていただきました。その時も、責任者の方というより、ある程度年齢の若く、実際に活動している方に集まっていただきたいとお伝えしていました。 それから公募委員も広く募集しました。公募委員の応募って通常1人、2人なんですけど、この時は、10人くらいの応募がありました。公募だと普通、在住や通勤通学といった住所要件をつけますけど、このときはそれをしなかったんですね。すると、東京在住で、元々足利に住んでいた方を含み、10名程度に応募いただき、その中から2人を選ばせていただきました。その方々は、協議会が解散して数年経つんですけれども、その後も足利に関わってくれたり、市に関係する委員になっていただいたり、かなり活躍していらっしゃいますね。

「こども宇宙プロジェクト」について

佐藤:すみません。話を横に広げすぎてしまいましたが、いったん現在のお取り組みまで話を戻しまして、今どのようなことをされているかについて、もう少しお話しいただけますか。


前川:足利市は、今年2021年で市制100周年になるのですが、これは100年に一回の、唯一無二の機会ですから、シビックプライドの醸成や、町への参画総量の増加につなげたいという思いで、それと絡めた事業をいくつか進めています。

その中でも「こども宇宙プロジェクト」は特徴的と言えると思います。コロナ禍の子供たちへの影響ということでは、花火大会-もう100何回も続いていたんですけども-戦時中以来の中止になってしまったり、遠足をはじめとした行事が軒並み中止になってしまったりと、思い出が作れていないということをたいへん憂慮しています。

それで100周年で何かできないかというなかで出てきたのが「こども宇宙プロジェクト」です。これは子供たちが自分の夢を書いた専用の用紙を持ってクラス写真を撮ります。その写真を集めて作ったモザイクアートを今年の12月にロケットに載せて、宇宙に打ち上げるというものなんです。宇宙で、宇宙飛行士さんが「足利のモザイクアートだよ」って広げてくれるのを、子どもたちは映像で見ることができます。

去年の秋口から、まさにコロナ禍だったのですが、市内57校、約1万人の子供たちの写真を撮りはじめ、それがこの2月に撮り終わりました。いまモザイクアートですとか、専用サイトの構築を進めているところです。

1年以上かけて進めている、ちょっとロングスパンな取り組みなので、これはこれで課題もあるんですが、子どもたちにとって一つでも思い出を増やせればと思ってやっています。


佐藤:コロナ禍だからこその子どもたちへの配慮の視点というのは、非常に興味深くお聞きしました。子どもたちが大事というのは当たり前のことですが、それを具体的な施策として取り組んでおられることを感じます。


前川:そうですね。まちがこのまま継続していくためには、小中高校生がまちへの関心を持つというのが重要だと思います。そうした下地があると、この先10年、20年後に活きてくるんじゃないかという願いを込めて、若年層への取り組みについてはすごく力を入れています。

学童向けということでは、学校の授業で、総合の時間の中には、地域を知るような時間が必ずあるんですね。ただ、先生たちは地域を知る授業をやってくださいと言われても、時間や情報量といった面で、正直なかなか難しい部分があると思います。そこで我々が先生たちの力になって支援しようと考えたのです。地域おこし協力隊や私たち職員が学校へ出向いて、町のことをお伝えする時間を持てるように、今ちょうど営業期間中です。


佐藤:なるほど。出前授業ですね。


前川:そうです。そして高校生については、高校生クラブというものを始めるところです。これは、市内にある2校の高校生たちの中から希望する生徒10人ほどに集まってもらい、高校生の視点で街づくりや活性化をしていくような取り組みです。授業で学んでいることと、自分自身の興味関心があることを掛け合わせて、それをまちづくりにどう活かすか、というようなことをやっていきたいなと考えているんです。これもちょうど来週会議があって、現在進行形の事業です。


佐藤:ほんとうに若い世代については力を入れて取り組んでおられますね。もう少し幅広く、別の世代についてはどうなのでしょうか。


前川:市の木、市の花ってどこの町でもありますよね。うちは昭和49年に本庁舎ができたときから、市の木がカエデ、市の花がツツジと決まっているんですが、今年100周年をきっかけに新たに設定しようということをやっています。またそれプラス、市の鳥というものも、新たに決めようということをやっていまして、まさに今、意見募集をしています。

これは、上は90代から下は10代まで本当に幅広い世代の方が意見を出してくださっています。


足利市市制100周年プロジェクト「A100」について



佐藤:なるほど。ありがとうございます。100周年についてお話しが出ましたが、足利市さんは今年、市制100周年を迎えられました。ここからは、その取り組みにフォーカスしてお話をうかがっていきたいと思います。 前川:100周年については、「A100」というプロジェクトを行っています。特設ウェブサイトをつくり、市をPRする新たなキャッチコピーを決める市民投票や、市民の皆さんに参加していただけるいろいろな企画を発信しています。 100周年をきっかけに、なるべくたくさんの人にまちづくりに関心をもっていただきたいので、あまりハードルを上げないということを心がけています。 例えば、ロゴマークは誰でもダウンロードできて、誰でもすぐに関われちゃうとか、あるいは誰でもポスターを貼ってくれる人は連絡ください、みたいな形で、窓口的な役割を意識しています。 ポスターを貼っていただけると、私が取材に行きまして、そのお店の紹介をするような取り組みもしておりますので、そんなかたちで徐々に広がっておりますね。 佐藤:企業のPRのようなものが、市のホームページで見られるということですか? 前川:SNSに掲載しております。この取材活動を通して市役所のなかにいるだけでは、全く知らなかった企業さんともコンタクトがとれるんですよ。企業さんとしては、足利市のことちょっと関心あるけど、そんなにすごいことで関わるようなことはできそうにないし…と最初は思われるようなんですが、でも100周年のポスター貼るくらいだったらできるよね、っていうあたりをきっかけに、いざ私が取材に伺ってみるといろんな話ができたりします。そこから次の展開に繋がったりもするので、なんか種をまいているような事業です。 佐藤:そうしたことの影響というのは、どういう部分に出てくるものでしょうか? 前川:これまで何の接点もなかった企業やお店や人と、これがきっかけで第一回目のコンタクトを取れたというのは1つの成果かなと思っています。取材に行ってみて「あ、こんな企業さんあったんだ」とか、初めて気づくことがたくさんあります。そういうのが、今後、例えばふるさと納税の返礼品を作っていくことになったとき、A100で会ったあの企業さんの商品いいよね、とか、または全く別の高校生とプロジェクトやるときに、あの企業さんだったら頼めるよね、とか、我々にとって必要な情報の蓄積の入口になっている。 100周年だから誰でも関わってください!よろしく!と言って、来てくださった企業さんというのは、基本は前向きじゃないですか。足利嫌だよっていう人はいないと思うんですね。なので、前向きさをくみ取って、うちが次につなげていく、関係ができていくという貴重な機会になっているということは言えると思います。 佐藤:先ほどまでのお話で市民の関心が高い地域のように感じていたのですが、企業さんの参画意識も高いんですね。 前川:そうですね。やっぱり歴史が長い街ですし、あとは合併したりもしていないですし、県境ということもあって、「栃木県民」というよりは「足利市民」としての、おそらく帰属意識は高いのかなという気はします。


-----(06号へ続きます)----

20回の閲覧

最新記事

すべて表示

「密を避ける・非接触」の工夫/コロナ禍だからこその防災広報を考える

コロナ禍だからこそ、より一層クローズアップされている考え方もある。在宅避難やローリングストックといったこともその一つだ。 今回のヒアリング先ではないが、東京都板橋区では、密を避けつつ防災意識の啓蒙を図る取り組みを、区内の事業者と協働し行った。 在宅避難への備えを具体的に充実させるため、区内のショッピングセンターを会場として、防災用品の購入促進キャンペーンを展開したものだ。 ▼PDFのダウンロードは