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With コロナ時代の地域の広報・プロモーション考える(4)東京都練馬区

最終更新: 7月12日

「With コロナ時代の、様々な地域の広報・プロモーションをどう考えるか」

第4弾は東京都練馬区 区長室 広聴広報課 広報戦略係 岡野勇太さんに引き続きお話を伺います。


【概要】練馬区が取り組む都市型のシティプロモーションの展開とコロナ禍における現時点での課題として、情報発信にも非接触型の方法であるオンライン広報が重要になってきたことを取り上げます。練馬区ではSNS活用やライブ配信を利用するなど工夫をされており、その状況についてお話しいただきました(敬称略)。

なお、取材は3月中旬に実施したため、内容は当時のものになります。


情報を届けるためのSNSの重要性

編集部:先ほど「広報しているつもりでも、全然届いていない方々も多くいるのだと改めて気づいた」(前号参照)というお話しがありましたが、SNSの活用が重要になってくると思います。

▶前号をご覧になっていない方はこちら


岡野:そうですね。SNSやTwitterでいいねやフォローをもらうだけでなく、飽きさせないように随時情報発信をしていかなければいけないというのがあります。SNSでもそれぞれ特性があると思うんです。フェイスブックであれば、40代~50代、TwitterやInstagramであれば、若年層など。


編集部:実は板橋区のSNSについては、私どもで研修を担当させていただきました。SNSをなんとなくやっている自治体もある中で、板橋区さんはターゲットにはっきりフォーカスし、HPと連動させてHPにも流入させていくという明確な方向性がありました。

SNSをうまく使うということでは、これも弊社が受託した案件ですが、川崎市がSNSを使ってポスタープレゼントキャンペーンをすることで、市民の方にどう思われているのか、「非接触型」マーケティングの一部として活用されていました。


岡野:コロナ禍で、ワクチン接種に関するSNSの反響は大きいですね。先日「順天堂大学の医療従事者向けのワクチン接種が始まりました」と投稿すると、通常の投稿以上に“いいね”がついていたんです。タイムリーな情報発信は、やはり重要だなと感じましたね。

 桜の季節では、コロナ禍で花見はだめ…となればSNSを利用して、練馬の桜を発信すると魅力発信につながるのではないかと思っていますね。


編集部:SNSの使用にあたり留意されているのはどんな点でしょうか。


岡野:戦略的に投稿していかなければいけないと思っています。SNSは開設することが目的になってしまいがちですが、板橋区さんがInstagramで女性をターゲットにしてHPへの流入を実現させているように、そうした戦略が必要だと思うんです。さらに自治体の場合は一度開設してしまうと、なかなかやり直せない、やめられないという状況も起こり得るので、そうした面でも戦略的に考えてやる必要があるなと思っています。

練馬区であれば、面白公園特集ということで「ばなな公園」などを取り上げたり、秋になれば区内の紅葉を皆で撮りに行って、紅葉月間にしよう…などの工夫をしています。インフォメーションの場は、区報やHPがあるので、SNSとして使い分けて運用する必要がありますよね。コロナ禍でなかなかスムーズに投稿できていないところもありますが…。


コロナ禍で見えてきた課題

岡野:区民とのコミュニケーションのあり方が変わっていく中で、面白い事例が1つあります。今までリアルでやっていた「小児救急ミニ講座」をZoom開催にした途端、定員があっという間に埋まったんです。小さいお子様連れで行くのは大変なので、オンラインが求められていたということが、はからずもコロナ禍の影響で分かりました。個人的な感想になりますが、おそらくこれはもうリアルに戻ることはないと思います。課の職員で講座を受けた者がいて「すごく良かった」と言っていましたし、感想にもかなり肯定的な意見が多かったようです。


同じような話で、初めてのママさん向けに「離乳食の作り方」の講座をリアルでやっているのですが、Zoom開催にして質問もできるようにすると、小さいお子様がいる場合はすごくありがたいんだろうなとも思っています。

こうした気づきも、他の部署には伝わっていないと思うので、やるかやらないかは別として、広報が橋渡しとして、このような事例を全庁に伝えていくことも広報の仕事(庁内広報)だと考えています。


編集部:なるほど。我々も関連事業として、いろいろなツールを使用して配信業務を行なっているのですが、その需要がやはり急激に去年の3月以降には増えてきています。

都内で6割くらいしかテレワークに移行できないという話もある中、それでも実践的に難しいだろうと言われている業務を変えていっているそうです。例えば、コールセンターの在宅導入。コールセンターがオフィスにある意味としては、トラブルなどがあった時に上の人がすぐに対応できたりするということがあると思いますが、その課題に対しては、マネージャーとZoomが繋がっている状態にしたのだそうです。何かあったらいつでも聞ける安心感がすごくいいということで、在宅のオペレーターを増やすことができたという事例がテレビで紹介されていました。

ニューノーマルにおいて非接触を考えることで、今までリーチできなかった層にもリーチできるようになる可能性が増えたというようなこともあるのかなと思います。


岡野:食育の話なんかは、Instagramの「ライブ配信」でやるのも面白いなと思います。インスタライブは、コメントで「今のもう一回見せてください」「硬さはどのくらいですか?」などと聞けて、それに迅速に答えることができると思うんですよね。リアルな講義では「すみません、今のもう一回見せてください」などと言いにくいと思うんですが、そのような課題も解決できると思います。

民間のサポートも上手くリーズナブルに取り入れていけると、区民の方のためになるのではないかと思います。


編集部:書類の書き方講座なんかを開くだけでも、問い合わせ電話は減るのではないでしょうか。申請が必要な時期などに、私も電話で訊ねたりすることがあります。業務効率化にも効果がありそうですね。動画などについては、いかがですか?


岡野:ビデオカメラや照明、一眼レフカメラなどは広聴広報課で一式揃えていて、貸し出しています。情報政策の部署では、adobeの動画編集ソフトも入れたパソコンを配備し、編集ができる環境も整備しています。

また、これは進行中なのですが、公園づくりをする時に地区で説明会をやらなければいけないときに、リアルではできないということで説明動画を作ってアップしたり…という話もあります。

こうした説明会動画は誰がみても分かるようにしなければいけないので、例えば聴覚障害者の方のためにゆっくり読むようにするといったような、動画の作り方についての相談を受けることも多くなっています。今は、関連の部署と連携して、マニュアルを作っているところです。まだアイデア段階ですが、動画とともに、テキストもアップし、ホームページの自動読み上げ機能で読み上げるといった対応も検討しています。コロナ禍だからすることになった説明動画の作成というステップの中で、今言ったような課題も出てきたという感じですね。


編集部:確かに、今までリアルな場で集合して行なってきたので、なかなか浮き彫りにならなかったことですよね。みんなが同じように受けられる環境を整えようとしているというのはいいですよね。


防災における広報の重要性

編集部:先ほどの「いろんな部署の中継部署になる必要がある」というお話しと、その前の住民コミュニケーションの話を合わせると「防災」というテーマが思い浮かびます。

このところ本当にいろいろな災害が発生していますが、住民はそうした事態に直面して、はじめて地元自治体の発する情報の重要性に気づくという側面もあると思います。

日常的にはシティプロモーションを切り口に、区民の方々と情報受発信できるアカウントを1つ作って、フォローしてもらう。それが災害時などに備えた第一関門であり、コミュニケーションの窓口になっていくのではないかと思うんです。


岡野:防災の広報という視点では、一昨年の台風19号が思い出されます。危機管理の担当部署は現場がメインになってしまうので、SNSの更新等は広聴広報課が対応しました。気象情報や水位等について投稿をしたのですが、その時の区民の方々からの反応は高かったと聞いています。防災の広報というのは、命にも関わる情報なので、区民の方も必要としている情報ですね。


編集部:板橋区では集合して避難訓練ができなくなったことから、防災に関する住民への周知徹底の一環として、区内の商業施設における防災広報の展示を行いました。各自治体でこうした新しい取り組みも模索されているようです。


広報についての意識醸成や継続性という課題

岡野:TwitterやFacebookは、うまく活用すれば、とても有益でプラスな情報発信にもなると思います。ただ現状どうしても属人的になってしまっています。伝える情報をタイムリーに発信したり、区民へ伝えるべき情報を正確に伝えたりするといった広報意識や感覚みたいなものは、なかなか伝承されにくいものだと感じています。

民間企業だと何年も広報部署にいる場合があると聞いたことがあります。一方で、区の場合だと担当が約3年で変わってしまうので、それこそ、今たまたまカメラに興味がある職員がいるから様々な風景の写真を発信していますが、配属が変わると、これも続けられないかもしれないということなんですよね。

どこの部署でも、基本的には同じだと感じていますが、特に広報という部署は、意識やセンス的なものを引き継いでいく必要がある部署だと思いますね。


編集部:法律の勉強をする時に「法によりて、人によらざれ」という言い方がありますが、その時の職員に委ねるのではなくて、仕組みとして「広聴広報課ではSNSの位置付けをこうしよう」という方針を決めることが重要だということですね。

ミレニアム世代やZ世代はもちろん30代~50代でもスマホを持つようになって、SNSはHPや広報誌と同じくらい大事な情報源になってきているので、その位置付けを変えていく必要があるのではないかと私も思います。


岡野:先日、新聞で見たのですが、足立区では、これまで作ってきたチラシのビフォーアフターを書籍として販売開始されているようです。それとポスターコンテストのようなものをやられていて、その年1番よかったポスターを決めておられるんですよね。区全体で広報意識を上げていて良い取り組みだと思っています。


編集部:あれが足立区のシティプロモーションですよね。足立区は2010年度からシティプロモーション課を設置し、「磨くプロモーション」と題して、職員向けの広報力アップ・ワークショップを行うなど、外向けではなく、まず庁内の意識改革から取り組みました。それが功を奏していますね。


岡野:広報意識って、本当に大事ですよね。通知1つ出すにも、記載されている文言であったり、デザインされたものでは、受け取った方々の印象は全く違うと思います。広報の意識は職員全員に必要だと思いますね。


編集部:広報意識を高めるための研修は実施していらっしゃるんですか?


岡野:やっていますね。「広報センスの磨き方」という研修を広聴広報課で開催しています。主な内容は、ポスターやチラシの作成方法についてです。色味などは3色までにする、キャッチコピーの作り方などを中心に毎年研修しています。昨年はコロナの関係でできませんでしたが…。


編集部:ずっとお話を伺ってきて、練馬区様は対策がかなり具体的だと感じました。進行中のお話しも含めて、他の自治体にとっても参考となる事例がいくつもあったと思います。本日はありがとうございました。


■練馬区への取材から

 新型コロナワクチン接種における先行事例として注目を集めた「練馬区モデル」。言うまでもないことだが、どこの自治体でもできるというものではない。

 練馬区は23番目の特別区として誕生し、さまざまな未整備の解消に力を尽くしてきた。

地域医療、医療環境においても担当する所属の営々とした取り組みがあり、それが「練馬区モデル」が生まれる土壌を用意したという。


 2015年、「Yori Dori Midori(よりどりみどり)練馬」という〝緑〟を前面に出した、区民参加の広報キャンペーンが話題となった。

「区外のひとから“練馬区面白いことやってるね”と言われ、区民がうれしく思うのが実感できた」と当時の担当者が語っていた。この感触が練馬区のシティプロモーション活動における駆動力となったのは想像に難くない。

 2021年、「練馬区モデル」はマスコミで大きく報道され、区民からの反響も大きかった。「先進的な事業を行えば区の魅力になる」そう語る現在の担当者の目は輝いて見えた。

自ら行った事業の中で気づきを得、それを糧として次へ向かう。このプロセスを繰り返すことで組織は成長する。成長し続ける自治体は住民にとって心づよいパートナーであり続ける。


公共広報コミュニケーション研究会 主任研究員 佐藤幸俊


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