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With コロナ時代の、地域の広報・プロモーションを考える(1)那須塩原市

最終更新: 2020年12月14日


「With コロナ時代の、様々な地域の広報・プロモーションをどう考えるか」

栃木県那須塩原市産業観光部商工観光課 高久課長(以下敬称略)に取材させていただきました。


主要な2つの温泉地域を持つ栃木県那須塩原市。

観光事業者に対するPCR検査事業実施導入と財源に入湯税引き上げを決定したその背景、実施の経緯について具体的な対応策について紹介します。

Q. 那須塩原市についてご紹介ください。


高久: 那須塩原市の人口は約11万6千人。全国と比較して、緩やかな減少幅で推移しています。新幹線駅の那須塩原駅をはじめ、東北自動車道の2つのインターチェンジや国道4号線も通っていて、交通の要衝といえます。

平成17年に「旧黒磯市・西那須野町・塩原町」の1市2町が合併して、那須塩原市になりました。

黒磯市においては板室温泉が、塩原町においては塩原温泉があるため、那須塩原市になって2つの温泉地を観光資源として保有しています。


観光客数は、栃木県全体の約9.5%、約880 万人が訪問。宇都宮市・日光市に次いで3番目になります。宿泊客数は、日光市・那須町・宇都宮市に次いで4番目に多い、県全体の11.1%で91 万7千人です。2つの温泉地を抱えたということで、大変魅力的な市となり、観光を主産業と位置付けて行っています。


コロナ禍の観光施策については、国でも緊急事態宣言、市でも非常事態宣言を出したので、4~5月の連休中に旅館に休業をお願いしました。

その後、栃木県による「県民一家族一旅行キャンペーン」、国の「GoTo キャンペーン」という形で事業が進むということで、県と国の事業の前にまず、那須塩原市独自で宿泊キャンペーンをしようということになりました。まずは市内の人を対象にして「中学生以下は無料、他は半額(1万円を上限とする)」というリフレッシュ!宿泊キャンペーンを実施。この事業では、那須塩原市に住んでいて塩原温泉・板室温泉に行ったことがないという方が多くいらしたので「ぜひ地元の人に、本当の温泉街の素晴らしさを知っていただきたい」という趣旨で行いました。これが大変好評で、当初の予算にさらに追加で予算を組んで実施したという経緯があります。これはやはり市民の方が「コロナ自粛」で旅行を控えたり、ストレスを抱えていた中で行ったことも大きいと思います。さらに、旅館もゴールデンウィークの人が集まる時期に休業しなければならないということで、市民の方が各旅館に対して応援をしてくださった結果だとも思います。


そのキャンペーンの前には、那須塩原市独自で、旅館等が実施する基本的な感染防止対策のモデルとなる「共助マニュアル」を作成。これを元に、感染対策を徹底して行ってくださいという周知をし、参加する旅館に支援もしました。準備万端で、市民の方を受け入れてもらう事業をするというのが、最初にやったことでした。

市民・県民・全国規模という形で事業が進んでいく中で、「コロナ禍において観光業はどうあるべきか」について市長とも相談しました。市長には観光に対する強い思いがありました。私は、昨年秘書課で市長と一緒にいたのですが、その中で市長の観光事業に対する熱い想いを感じていました。そこで市長と相談して、本市独自の「コロナ禍における観光のあり方」を作成しました。


「コロナ禍における観光のあり方」では、まず住民の安心安全と観光の持続性にどう取り組むかが重要であるというところに視点をおきました。「観光客・事業者・地域住民の3者の合意形成が必要ではないか」と考えたのです。この3者の合意を促して、コロナ禍における観光のあり方を考え、キーワードを定めました。

それは

① 信頼(安心・安全)

② ウェルネス(心と身体のケア)

③ 責任

の3つです。

これらを元に、本市独自の観光モデルを新たに構築していこうと決定しました。


宿泊事業者へのPCR検査の実施はメディアにも大きく取り上げられましたが、これは「①信頼」の部分で、観光客の皆様はコスト面よりも安心・安全を気にしているのではないかと考えたことがきっかけです。観光客受け入れのガイドラインを設定して、まず感染対策の「見える化」を行おうということで決定しました。その一環として、観光・旅行・宿泊事業者の方々にPCR 検査を実施していただいたり、国の接触アプリを導入していただいたりすることで、安全・安心の見える化をしたということです。


また「③責任」については、ハワイなどでも行っているレスポンシブルツーリズム(※)という概念があります。要は「旅行客にも安心な状況で那須塩原市に来ていただきたい」ということです。これは10 月に宇都宮の旅行会社であるうつのみや観光が、ツアーの中でPCR 検査をするという旅行商品を作っていました。そこでうつのみや観光と協定を結んで「那須塩原市でも」ということで、12 月にはPCR 検査付きの塩原温泉・板室温泉ツアーを開催する予定です。


「コロナ禍における観光のあり方」において事業を進める中で、商工観光課におきましても旅館の皆様と話し合いをしながら、受け入れ態勢の安心・安全を見える化し、全国に打ち出しています。板室・塩原温泉では日常の感染対策にプラスして、自分自身のPCR 検査を実施してお客様を受け入れようと事業を進めているところです。


Q. PCR 検査導入の施策については、全ての方が賛成というわけではなかったとのことですが、実際はいかがでしたか。


高久:「万が一PCR 検査をして従業員の方が陽性だったら」ということで、風評被害を心配する声もありました。温泉地区2つのうち、板室については全て賛同を得られました。


塩原温泉地区は賛成が3割で、反対も約半数でした。塩原温泉は職員が全旅館を回ってご説明をしている状況なのですが、半分弱が現在賛成をしてくださって、一緒にやっている状況です。しかしまだ、心配だという声があります。


板室と塩原に1つずつ旅館組合があり、そこと協定を結んで全ての皆様と進めたかったところですが、現実的には心配という旅館もあったのです。そこで個別に旅館様と合意書を結び、順次進めています。賛同いただける旅館様に関しては、全国の皆様にお伝えするためにホームページに掲載しています。他にも、読売新聞の全国版に記事を載せて、一緒にやってくださる旅館名を公表・発表するようなことも行いました。当初反対されていた方でも、市の趣旨に御理解いただき、「一緒にやろう」と言ってくださる方もいらっしゃるので、時間がかかるかもしれませんが、コツコツと説明をしながらやっていきたいと考えています。


Q. 具体的な財源として「入湯税の値上げ」を掲げていますが、規模などによっても額が変わるという報道もありました。旅館によっては、入湯税をあげるということに対する拒否感があったとお話を聞いたのですが。


高久:当初、我々の方で想定して旅館のお手間をかけないように「一律200 円」の増額を提案しました。ただ、なかなか協議が整いませんでした。


これは当然、1万円以下の旅館もあれば2万円以下の旅館・2万円以上の旅館もある中で、一律というのはどうなのかという意見がありました。1万円以下のお安い旅館に関しては金額が高すぎるということで、12 月1 日からは「1万円以下は50 円、1万円以上2万円以下は100 円、2万円以上は200 円」という金額で増額することで進んでおります。こちらは、2022 年3 月31 日までの期間限定の増額です。


暫定的に入湯税をあげさせていただいて、安全安心対策の費用にさせていただいいるところです。ただ、入湯税を元の金額に戻して新たな目的税を設定することも検討を進めています。


Q. お話を伺ったのは旅館についてですが、周辺や他の自治体などからのお問い合わせや周りの反応はいかがでしょうか。


高久:今回の入湯税引き上げの報道が出た段階で、「なぜ入湯税をあげて感染対策にまわすのか」というご意見と、「そこまで感染対策をしてくれて安全・安心なら行きたい」という半々のご意見を、全国的に電話やメールでいただきました。


さらに冒頭でも申し上げた通り、新幹線を降りたらどこまでが那須塩原市で、どこからが那須町だという認識はないかと思うのですが、那須町の関係者の方々からは「入湯税をあげたら、那須町まで上げたと勘違いされてしまうのではないか」という御意見もいただきました。


Q. 温泉街を行政区域の中に持たれているところは、全国で非常に多くありますし、観光事業者の安全・安心を真剣に考えられている自治体は多い実感があります。緊急事態宣言の後、那須塩原市ではこれだけスムーズに対応できた「スピードの要因」はどこにあったと思われますか?


高久:市長や我々も“スピード重視で”という想いがありました。

我々自身 “スピードしかない”を合言葉に、今までにないほどのスピード感を持って実施しました。実は、私も係長、係員の多くも4月に異動してきたばかりでして、観光行政に一度も従事したことがありません。新しいメンバーが多い中で、4・5・6・7 月は本当にあっという間で、今までにないスピード感を意識しました。


ただこれは我々の課に限らず、市・市役所全体がそのような雰囲気で進みました。また、市長のリーダーシップということで、スピード感を強く持っている市長なので、自身のTwitter などで情報を発信してくださいました。リフレッシュキャンペーンも、県の事業の後では何の意味も持たないと思っています。そういう意味で、商工観光課全体が市・県・国という順番の切れ目のない事業の流れをイメージして取り組んだことが、スピード感を持てた要因かと思います。


Q. 特に秘書課で市長のすぐお側にいたことで「市長との危機感の共有が素早かった」「観光行政がゼロベースだったからこそ、何でもチャレンジでき、行政のマネジメントとしてスピード感がでた」ということはありますか。


高久:当然、秘書課に一緒にいたということで、市長の考えが分かっていたということも一つではありますが、今回はほとんどが4月に異動してきた新しいメンバーだったことが大きいと思います。対外的には、それを見せないように努力してやったのですが、現実的にこれまでの業務もあまりわからない中だったのは、逆に良かったのか、と思ったりもします。色々考えると、調整とか諸々の関係で遅くなり、慎重にならざるを得なくなる部分があったのですが、あの時は“勢い”だけがあったのかもしれないです(笑)。


Q. 非常にアバウトな質問ですが「自分が頑張ろうと思っても、なかなか組織としてのフットワーク力がない」「そもそも予算がなく、動けない」など、担当者レベルで想いがあっても動けないジレンマを抱えていらっしゃる方々がいます。

そういった方々に、

① 職務として、組織の中で具体的にどのようなコミュニケーションを取れば、危機感を共有できるのか

② 具体的に、日頃からどういう形で“コロナ禍の広報”や“商工観光”に対する対応をしていくのかについて、

ご経験の中から共有いただければと思います。


高久:今回のコロナ禍の各種取り組みは、国の総務交付金(総務省による地方交付金)による事業なので、予算の関係は“あて”があった形になります。当然、我々は職員なので「やりたいことがすぐにできない」のは事実です。ただ、どうしてもやるべきことは課内や係で協議をし、上にあげて説明をして実行する姿勢は常に示しているつもりです。今後については、コロナの影響により4・9・10月で状況が全く異なります。「全然PCR 検査を受けられない」ところから、色々なところで受けられるようになるなど、半年間で状況が変わっているのを実感しています。ですからコロナ対策については、特に日々変わっていく状況にあると思うので、係や課で話し合いをしていく中で“やるべきこと”や“やりたいこと”は予算化したり、対策を練るようにしたいと思っています。


ありがとうございます。一番大事なことは、民間であれ職員であれ「想い」「決意」なのだと学べた気がします。


まず那須塩原市全体で“切れ間のない対策をとる”という大きな枠組みの中で、リフレッシュキャンペーンを含めた1つ1つの施策をうたれたと。その中にPCR検査があり、財源の一つとして入湯税があったということですね。重要なのが“切れ間のない対策をとる”という1つの要素がその施策だったと理解できました。そして1番大事なのは「スピード感」と「すぐに対応をとっていく結束感」と感じました。

「意識を強く明確に持つこと」「共有すること」「スピード感を持ってなんとしてでもやること」は、民間企業の事業運営と同じだなと思いました。日頃から組織の中で、緊急時を考えて意識して動いていく必要があるというのは、行政においても同じなのだなと思いました。このたびはありがとうございました。



那須塩原市の観光事業促進の取り組み例


「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」の実施について

欧米で、美味しいものを食べながらその地域・文化を巡る“ガストロノミー”という考え方があります。そこに日本特有の温泉という視点をプラスして「美味しいものを食べてウォーキングしながら、その地域・自然・文化を楽しんでもらい、温泉に入って帰ってもらう」というイベントを企画しました。コロナ禍なので「イベントをやるのはどうなのか」という考えもありましたが、ウォーキングということで屋外のイベントですし、10 名程度のスタートという形にして、100 名限定で今回は実施しました。


先ほどの「コロナ禍における観光のあり方」の②ウェルネスに絡んできますので、継続的にやっていきたいと考えております。

昨年度に、モニター的に小規模で試しにやっていました。そこで「今年度はもっと大きい形でやろう」と予算をつけていたのですが、コロナの関係で規模を縮小してやることになりました。今年は板室温泉で開催するのですが、塩原温泉もありますので、毎年場所を変えながら開催できればいいなと考えています。ちなみに、来年は塩原温泉で5月30日に開催する予定です。現在クラウドファンディングでのご支援を受け付けています。お礼品に参加権もありますので、ご興味を持たれた方は市のホームページをご覧ください。

★那須塩原市ホームページはこちら


公共広報コミュニケーション研究会 SNS広報分科会主催

SNSでの情報発信技法』無料オンラインセミナー」のご案内 当研究会では、SNSで情報受発信するスキルアップ研修を多くの自治体で実施して参りました。そこで、以下の日程で日頃よりSNSをご担当されている職員の方向けに無料のオンラインセミナーを提供いたします。

◎◎詳細◎◎ 日時:2020年12月17日(木) 17時30分〜18時 テーマ:Withコロナ時代のSNSコミュニケーション術 総合基礎編(ダイジェスト版) 講師:原口綾乃(株式会社チーム・エムツーSNS活用コンサルタント) 項目:国内主要SNSのデータと特徴の紹介 Facebook / Twitter / Instagram の投稿の特徴とK P I設定について


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